北朝鮮脱北兵士 27センチの巨大寄生虫50匹


体内から27センチの巨大寄生虫 「脱北兵士」が伝える北朝鮮の現実
文春オンライン 11/26
朴承珉

週刊文春 2017年11月30日号

13日午後3時過ぎ、板門店の共同警備区域(JSA)に銃声が響き渡った。
 1人の北朝鮮軍兵士が、韓国側への亡命を企て、ジープで走ってきたところ、排水路に落輪。兵士は車を降りて走り始めたが、北朝鮮軍の追跡隊4人が、小銃と拳銃で40発ほどを乱射し、脱北兵士は軍事境界線から南へ50メートルのところで倒れた。
「これを認めた韓国軍の警備隊隊長が、自ら2人の軍曹を引き連れて、匍匐(ほふく)前進で兵士に接近、身柄を確保した。上層部からは“部下を送るべきだった”と詰問されたが、彼の行為に国内では称賛の声が寄せられました」(現地記者)
 板門店から亡命してきた北朝鮮将兵は、98年と07年に続き、今回が3人目。まだ意識が戻っていないため素性は不明だが、下士官階級とみられている。
 この兵士は国連軍のヘリで大学病院に運ばれ、肺と腹部など2回の手術を受けた。
 執刀した亜洲大学のイ・グクジョン教授は、「銃傷による内臓損傷はもちろん、寄生虫も多いため、予断を許さない状況だ」と説明した。
 驚くべきことに兵士の体内からは、最大27センチの寄生虫が50匹以上も摘出されたという。北朝鮮では、野菜などの肥料として人糞を用いるためと思われる。
「薬も十分でないため、韓国の医師が訪朝した際の調査によると、北朝鮮国民の約95%が寄生虫に蝕まれています。従来、JSAに配置される北朝鮮の兵士はエリート層で、栄養状態も一般の兵士よりもいいとされてきた。ところが今回亡命してきた兵士のお腹の中にはトウモロコシが少しだけ。それだけ北における飢餓が深刻なことをうかがわせます」(前出・現地記者)
 実は“脱北者”は、ほかにもいるという。
「タンチョウヅルです」と別の現地記者が語る。タンチョウヅルは本来、冬になると北朝鮮の安辺地方に飛来する。
「ところがこのところ、80キロ南の韓国の江原道鉄原郡まで下ってくるようになった。北朝鮮では、住民が田んぼなどに落ちている落穂まできれいに拾っていくために、タンチョウヅルのエサが残っていないのです」(同前)
 北朝鮮の現実を世界に知らしめた兵士は、依然、生命維持装置で人工呼吸をしている。


脱北者が激白!金正恩体制下の北朝鮮で亡命が減少している理由とは

11/14(火)

 南北軍事境界線の板門店で、北朝鮮兵士が国境を越えて韓国に亡命を試みた。毎年1000人以上が脱北する北朝鮮。その全容は未だ謎のベールに包まれているが、その実情を知るのも脱北者たちだ。

 現在、韓国のソウルに暮らしている金柱精さんは、8年前に脱北した。日本で生まれた金さんは、1970年代の「帰還事業」で、幼少期に祖父と共に当時“地上の楽園“と謳われた北朝鮮へ渡った。しかし金さんたち家族を待っていた現実は、それとは程遠いものだった。

 「一番辛かったのは、“地上の楽園“などと宣伝され、憧れていた祖国の実態がそうでなかったこと。そして、そこでしょうがなしに生きていかなければならない自分の人生に対する結構やるせなさもあった。未来が見えないというのが根本的な問題だった」。

 その後、強制収容所では、激しい暴力や飢餓も経験した。結果、北朝鮮で30年間暮らすも、厳しい生活に耐えかね、金正日体制下の2009年、脱北に成功した。

 金さんは、今でも北朝鮮国内に情報源を持ち、金正恩体制の現状を収集している。9月中旬の「火星12号」発射を最後におよそ2か月にわたって沈黙を続ける北朝鮮。金さん「体制維持のための脅しだけだと思う。いわゆる自分は一国の主であると国際的に認めさせるのが急務なのだと思う。北朝鮮と話し合いをしなければいけないなと思わせるために打ち上げていた“ただの花火“だ。打たなくなったのは、一旦やりたいことをやりきったからだろう。金正恩体制は安定したと思う」。

 現状が行き詰まりを見せる中、トランプ大統領は12日、「金委員長と友人になるよう頑張ろう。いつかは実現するかもしれない」とツイート。“圧力“から“対話“へ、転換を始めている可能性もある。

 そんな金正恩体制の“安定“を象徴するのが脱北者の人数だ。これまでにおよそ3万人が脱北している、そのほとんどは金正日体制下でのもの。金正恩体制になってからは減少傾向にあるのだ。そしてこの事実こそが、金正恩体制の本質を表しているとも言われている。それが金委員長による恐怖政治だ。北朝鮮は今、国境の監視強化、脱北の厳罰化を推し進めているという。

 国民がもっとも恐れていると言われるのが、北朝鮮国内に6か所存在するとみられる「強制収容所」だ。体制に批判的な態度を取ったり、反発していると見なされると、ある日突然、政治犯として裁判にもかけられることなく収容されてしまう。そして炭鉱労働やトンネル工事など、危険な労働が強制されとされている。

 北朝鮮政治が専門の礒崎敦仁・慶大准教授は「経済的な理由で脱北する人が多いので、経済が回復基調にあると脱北者は減る。中国にいる朝鮮族が、脱北者の援助をしてきたが、その“援助疲れ“も出てきている」と話す。

 「韓国に入ってからの脱北者には悲惨さもある。韓国で『地下鉄はこうやって乗るんだぞ』などと教育を受け、クリーニング店やタクシーなどの職業を韓国政府に紹介してもらう。でも、命からがら逃げてきたのに、なぜ未だに貧しいんだという気持ちが湧いてくる。隣の韓国人はパソコンで稼いでいる、じゃあ自分たちも仕事を辞めてパソコン学校に通おう、ということで、失業率も半数近くになっている。韓国に行っても幸せになれないという情報が口コミを通じて北朝鮮に入る。そうすると、危険を冒して脱北するよりは、北朝鮮で家族と共に、いかにこの体制下で自分たちの生活を良くするかという方向になる」(礒崎准教授) 

※「礒崎」の「崎」は正式にはたつさき。
(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


兵士が脱北!北朝鮮を取材したばかりの記者が報告する平壌の実態

11/14(火)

13日午後、南北軍事境界線を越えて北朝鮮の兵士が韓国に亡命を試みた。
 
 北朝鮮政治が専門の礒崎敦仁・慶大准教授は「ここでの亡命は極めて異例。おそらく板門店近辺を守っていた兵士だと思われるが、彼らはエリート中のエリートで、家族も含め思想的にも忠誠心が間違い人物が選ばれ、待遇が良い」と話す。

 今回の事件について、北朝鮮はどう出るのだろうか。礒崎氏は「今までこうしたケースが少ないので何とも言えないが、朝鮮中央通信など通じて“韓国が誘導した“とか“身柄を寄越せ“と対外的に主張してくることが十分に考えられる」とした。

 今回脱北したのは兵士だが、毎年、多数の市民が北朝鮮から亡命することが知られていている。把握されている脱北者の数は、金正日体制下にあった2009年の2914人をピークに減少、2016年には1417人となっている。

 礒崎准教授は「韓国の調査で脱北の理由はわかっている。経済的理由が大部分だ。ただ、経済は90年代のどん底に比べ、間違いなく良くなっているし、平壌中心部から特権階級が脱北するケースは非常に少ない。平壌と地方との格差は広がっているものの、餓死についてもあまり聞かなくなってきた」と指摘する。

 国連安保理による経済制裁が続く中、そんな北朝鮮の一般市民はどのような生活を送っているのだろうか。先月下旬、テレビ朝日平壌を取材した。2007年から数十回にわたって北朝鮮国内の取材を行ってきたテレビ朝日社会部の李志善記者は、今回の取材についてこう説明する。

 「北朝鮮側から声がかかるパターンがある。本国から朝鮮総連経由で各メディアに打診がある。今回も、『国際釣り大会を開催する』という名目だった。北朝鮮に入れるルートは限られているが、最近は北京から飛行機で入る。国際情勢が緊張しているタイミングなので取材申請すると、直前になって突然『国際釣り大会が中止になった』という連絡がきた。しかし『それでも取材するか』と誘われたので、行くことにした」。

 平壌市内でカメラが捉えたのは、日本と変わらない日常だった。建設中の建物には労働者の姿も見え、工事が止まっているような様子は確認できない。また、多くの市民が歩きスマホをしていた。北朝鮮スマートフォン台数は増加傾向にあり、およそ400万台が普及していると言われている。

 スーパーマーケットを覗いてみると、白菜が大量に並べられ、季節の果物・野菜も充実。また商品棚にはブームになっているという納豆が並んでいた。日本語同様「なっとう」と呼んでいるようで、客の女性は「そのままスプーンですくって食べたりもする。熱いご飯と混ぜて食べる」と答えた。店員の女性は「健康食品なので、おばあさんやおじいさん、40代過ぎの方がよく買っていく。とても好評だ」と教えてくれた。

 「トップが納豆が嫌いであれば、スーパーには置いていないと思う。少なくとも金正恩委員長の心の中に、日本があるということだ」(礒崎准教授)

 今回取材クルーが北朝鮮に滞在できたのは8日間だったが、常に制約がある中での撮影だった。李記者は「表向きは案内をしてくれるガイドさんだが、誰かが必ず付いてくる中での取材だった。ただ、金正日総書記の時代は取材がものすごく厳しく、何を言ってもダメだという感じだったのに比べ、金正恩委員長になってからは取材交渉ができるようになった。今回も『ちょっと車止めて』と言って降りて、いきなり市民に取材することもできた。よほど壮大に仕込んでいるのか、あるいは平壌であれば見せても大丈夫だと自信を持ってきているのではないか」と振り返る。

 「北朝鮮当局者は安倍総理に勲章をあげたいと言っていた。つまり、制裁のおかげで、核・ミサイル開発がより早く進むんだと」(李記者)

 礒崎准教授は「記者さんが映像を撮ってきてくるのは非常に意味のあることだと思う。しかし同時に、これらは北朝鮮が見せたいもの、報道してほしいものでもあるということを前提に考えなければいけない。金正恩体制になってからは、日本の記者も積極的に入れようとしているが、全員にビザを出すわけではない。軍事パレードの際も一社だけ入れないなど、メディアコントロールを行っており、それが上手になっている印象がある。街頭でインタビューに応じる市民も仕込みというより、外国人にこう聞かれたら当然こう答えるよね、と国民が判断しているということ。スマホの普及アピールも、自信の表れなのだろう」指摘する。

 街を歩いていた女性は、取材に対し笑顔で「私たちはロマンチックに良い暮らしをしています」と話すが、経済制裁によって、ガソリンや軽油が輸入できないため、北朝鮮国内では価格が高騰、市民生活にも徐々に影響が出始めているという。トランプ大統領はアジア歴訪で、さらなる経済制裁強化の可能性にも言及している。果たしてこれが、北朝鮮のすべてを物語っているのだろうか。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)



11月13日、板門店JSA(共同警備区域)を越えて、韓国へ亡命を試みた北朝鮮兵士の素性が明らかになってきた。脱走時、北朝鮮側から40発の銃撃を受け、手術後も意識不明の状態が続いていた兵士の第一声は、次のようなものだったという。
「あぁ、痛い! ここが本当に韓国ですか?」
 彼の名前はオ・チョンソン(24)。板門店の後方にある非武装地帯を警備する民警中隊所属で、幹部の運転兵として軍に8年間服務中だったという。病院関係者によると、俳優のヒョンビン似のイケメンだというオ氏の身長は170センチ、体重は60キロほど。北朝鮮の青年の平均身長より5、6センチ高い。
「彼と握手した主治医は『空挺部隊の隊員のような引き締まった筋肉を感じた』と語っています」(現地記者)
 オ氏の父親は人民軍中佐で憲兵出身と伝えられた。いわゆるエリート層である証拠に、“白い靴下”を履いていたという。
「物資不足の北朝鮮では一般兵士の大半は、靴下ではなく、丸めた布を代用するのが普通です」(同前)
 一方で、オ氏の体内が多数の寄生虫に蝕まれ、胃の中には少量のトウモロコシしかなかったことも伝えられた。
北朝鮮では、エリート層といっても、高級幹部以外は、生活に余裕はない。大学教授でさえ月給をほとんど受けとっていません」(同前)
 オ氏は朴槿恵前大統領が失脚し、文在寅政権が誕生したことを知らず、大統領制について説明すると「本当に国民の投票で大統領が選ばれるのか」と驚いたという。
 そのオ氏は韓国への憧れを隠そうともしない。
「彼は、韓国のガールズグループ『少女時代』のファンで、病院で彼女たちの曲の“オリジナル・バージョン”をリクエストしたそうです。北朝鮮でもアメリカのドラマを観ていたようで、病室では韓国の芸能番組などを熱心に観ています。最近では『チョコパイが食べたい』とも語ったそうです」(同前)
 韓国のチョコパイは、南北交流の象徴だった北朝鮮開城工業団地(現在閉鎖中)の労働者の間で大人気だった。
“黄色い風”(北朝鮮側で資本主義を指す言葉)は、JSAを易々と超えている。