韓国旅行事情 盗撮 出生率


韓国が「盗撮大国」に 日本人旅行者もホテル、トイレに注意
2019/04/10 07:00
ポストセブン

10連休となる今年のゴールデンウイーク。久しぶりに国外で過ごすという人は多いだろう。数日程度の手軽な海外旅行先として、韓国の人気は引き続き高い。ところが現地では、女性をターゲットにした卑劣な犯罪が横行し、摘発が相次いでいる。ソウル在住のジャーナリスト・藤原修平氏が報告する。
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 このひと月ほど、あるニュースが韓国で連日報じられている。日本にも進出しているK-POP歌手のチョン・ジュニョンが女性たちとの性行為を隠しカメラで撮影し、
SNSのグループチャットを通じて友人と共有していた事件だ。しかも、チャットのメンバーは「人気グループBIGBANGの元メンバーV.I.ことスンリ」や、「実力派シンガーソングライターとして昨年末に日本進出したばかりのロイ・キム」など、今を時めく男性歌手ばかり。彼らの多くが立件されて芸能界引退に追い込まれている。
 それだけではない。4月に入ると “第2のチョン・ジュニョン・チャットルーム”と称されるSNSグループチャットがあることが報じられた。やはり女性たちとの性行為を隠しカメラで撮影し共有していた事件だが、チャットのメンバーには男性歌手や映画俳優、モデルたちがズラリと名を連ねており、韓国社会にさらなる衝撃が走っている。
 一連の盗撮事件で韓国社会が極めて深刻なのは、いわゆる“身内”であってもまったく信用できないところだ。2016年8月に発覚した水泳韓国代表女子更衣室の盗撮事件では、同じく韓国代表に選ばれた男子選手が犯人だった。その選手は2009年から2013年にかけて6回にわたり、万年筆型の小さなカメラを用いて隠し撮りを行っていたという。
 また、昨年9月には、日本でも知られている女優のシン・セギョンと歌手のユン・ボミ(ガールズグループApinkのメンバー)が、人気番組の海外ロケ中、ホテルの部屋でスマホ用補助バッテリーを偽装した撮影装置(盗撮用カメラ)を発見。調べたところ、これを設置したのは番組の撮影スタッフだった。このスタッフは事件発覚前、「俺の補助バッテリーどこいったのかな」などと言い、彼女らの部屋に置き忘れたような素振りを見せていたという。幸いなことに、カメラの発見は設置から1時間後で、韓国全土で知名度の高い2人のプライベートな姿が盗撮されることはなかった。
 盗撮犯のターゲットは身内ばかりではない。今年3月には、モーテルの客室に隠しカメラを設置し、宿泊客のプライベートをネットで生中継していたグループの4人が逮捕された。犯人らは全国10都市にある30か所のモーテルに、803台もの隠しカメラを設置。Wi-Fiを通じてネットに接続し、リアルタイムでカメラの遠隔操作まで行っていた。昨年11月24日から今年3月3日までの約3か月、盗撮動画を有料サイトで生配信し、約700万ウォン(約70万円)を得ていた。隠しカメラはTVや電源コンセント、ヘアドライヤースタンドなどに設置されていた。使用されたカメラは、犯人らが海外サイトを通じて20ドル(2250円)ほどで購入したものだったという。
 女子トイレの盗撮となると、もはや枚挙に暇がないほどだ。昨年8月25日にはソウル大学の女子トイレに隠しカメラを設置したとして、男子高校生が逮捕された。女子トイレに隠れていたところを女性に発見されたため発覚したが、彼の携帯電話からは何枚かの盗撮写真が確認されたという。
 昨年9月には、ソウル市江南区三成洞の女子トイレに隠しカメラを設置した容疑で男が逮捕された。トイレットペーパーの芯の中に小型カメラを入れて棚の上に載せ、それをトイレットペーパーの山で覆うという手口だったが、それがあまりに不自然に見えたので、あえなく発覚と相成った。残念なことに、犯人は近くに住む日本人会社員だった。
 そのほか、今年に入っても仁川警察署の幹部が市内雑居ビルの女子トイレで撮影を行っているのが見つかって通報されたり、軍事境界線のあるパジュ市では飲み屋の女子トイレで盗撮した陸軍兵士が摘発されたりしている。
 こうした状況の中、もはや公共トイレに入れないという女性たちが急増。ある20代の女性はこう嘆息する。
「外出先ではなるべくトイレを使わないようにしていますが、どうしても行かざるを得ない場合、隠しカメラがあるかどうかを徹底的にチェックします。たとえ見つからなくても、本当にカメラが置かれていないのかどうか、自信がありません」
 自治体や交通機関も対応に追われている。今年の旧正月の連休前には、隠しカメラの有無を確かめるため、全国の公共トイレの一斉点検が行われた。韓国中西部の大田市では、地下鉄の駅構内にあるトイレを、カメラ探知機を使い1日2回、点検しているという。
 韓国で隠しカメラの問題が事あるごとに取り沙汰されるようになったのは、2年前の2017年春頃からだ。その前、数年間に隠しカメラの市場規模が急拡大し、性犯罪に利用される懸念が市民団体などから表明された。それが今や国を挙げての大騒動になっている。
 恐らくは想像できないほど多くの隠しカメラが、プライベート空間に設置されているのだろう。韓国を訪れる日本人旅行者も、ホテルやトイレでは注意したほうがよさそうだ。


訪日外国人の増加より、日本人の出国率の低さが気になる
中村 正人
2019/04/10 06:30
Forbes

昨年の訪日外国人数は過去最多の3199万人だったが、日本人の海外旅行者数も微増(6%増)ながら1895万4000人(日本政府観光局)で過去最多だった。
日本人の海外旅行者数を押し上げたのは、韓国や台湾、香港など、近隣のアジア方面に出かける旅行者が増えたことにある。例えば、2018年の訪韓日本人は、前年比27.6%増の294万8527人(韓国観光公社)、訪台日本人も200万人強(台湾観光局)で前年より伸びている。
この数字から、「なぜ日韓関係がこれほど悪化しているのに、韓国を訪れる日本人が増えているのだろうか」と疑問を持つ人も多いに違いない。訪韓日本人の数は、2012年に過去最多の351万人となって以来、年々減り続けていたが、16年以降、再び増加に転じている。
その理由のひとつに、訪韓日本人の若年化があるようだ。年代別に見ると、以前は40代女性の数が最多だったが、16年以降は20代女性の数が最も多くなっている。
歴史問題を文化・旅行と結び付けない若年層
都内を代表するコリアタウンとして知られる新大久保を訪ねると、この現象もたちまち納得できてしまう。この街を行き交う人々のここ10数年の変化を眺めていると、かつて多く見られた中高年の女性の姿はめっきり減り、いまでは若年齢化が進み、ティーンエイジャーたちであふれている。
制服姿の高校生たちが、ジャンクな韓国式ホットドッグの屋台に並び、路上で立ち食いをする光景が日常となっているのだ。韓流や韓国コスメ、食材の店に群がるのも彼女たちで、まるで原宿のようなにぎわいだ。

韓国式ホットドッグの屋台に並び、路上で立ち食いをする光景が日常
実際に韓国へ旅行に行くのは、もう少し上の20代の女性かと思われるが、とにかく若い人たちには、国どうしの政治の事情などまるで関係なさそうだ。羽田空港国際線ターミナルの、ソウル行き深夜便の乗客の大部分を占めるのも彼女たちである。
韓流好きの事情通に聞くと、韓国を訪れる日本人の若年齢化と、いまの若い世代がテレビをまったく観ないことには関係があるという。彼らが旅行のための情報を入手するのは、もっぱらYouTubeをはじめとしたネットメディアで、自分たちに近い年代のYouTuberたちが海外の街をそぞろ歩き、屋台で食事をする姿などを観て、旅のイメージづくりをする。
そして、実際に旅行に行くことが決まったとき、初めて旅行ガイド本を手に取る。若い女性向けのガイド本には、食や買い物、体験ツアーなどの情報のみがコンパクトにまとめられていて、旧来のガイド書ではページが割かれていた各国事情や、テレビをはじめとしたメディアが日々報じているような国際関係の話題とは無縁である。

もはや韓流は小学生の心までつかんでいるという
若い世代のテレビ離れは進んでおり、近頃では小学生の中にも韓流動画を観ながら、韓国語を学ぶ子さえいるという。この話は、中国の多くの若い世代がネットに流通する日本のドラマやアニメを通じて日本語を覚えたというエピソードを思い起こさせる。
興味深いことに、韓国でも「歴史問題を文化・旅行と結び付けない若年層が増えている」(中央日報日本語版2018年09月11日)という報道もある。ことのよしあしはともかく、ネットがもたらす世代による情報環境の乖離は、各国に共通した現象といえるかもしれない。
こうした若い世代の変化はあるものの、全体でみると、日本人の海外旅行は久しく盛り上がりに欠けている。近隣アジア以外では、ハワイやグアムなどを訪れる人こそ例年並みながら、欧州方面への渡航者はテロやデモの風評も影響して停滞している。伸びているのは、LCCなどを利用した「安近短」の個人旅行というのが実情だ。
気になる数字がある。日本人の出国率の低さが、近隣アジアの国のなかでも際立っていることだ。たとえば、韓国の場合、人口約5100万人に対して出国者数は5344万人(2017年 韓国法務部)で出国率104.8%。台湾は人口約2350万人に対して同じく1565万4579人(2017年)で同66.4%。
一方、日本は人口1億2700万人に対して出国者数1895万4000人(2018年)で、14.9%という出国率は、韓国の7分の1、台湾の4分の1だとすれば、驚くほど低いと言わざるを得ない。
足を運ばず、情報だけで満足か
実は、この出国率の低さは最近のことではない。日本人の海外旅行者数は、すでに1990年代半ば頃から1600万人~1800万人の間で伸び悩んでいる。日本を訪れる外国人は著しく増えたが、日本人の海外旅行者数はこの25年間増えていないのである。
理由はいろいろ考えられる。国土の大きさの違いがあり、韓国や台湾など小さな国ほど出国率は高くなりがちだ。観光資源の集積度で日本が恵まれているのは確かで、海外に行かなくても国内で旅行を楽しめる環境にあるからと言えなくもない。
また、多くの日本人が、趣味やレジャーの多様化によって、海外旅行にお金をかける価値をあまり感じなくなっていることも挙げられるだろう。近年の近隣諸国との政治関係の悪化や朝鮮半島情勢にみられる国際社会の不穏な雲行きも、多くの日本人を内向きにさせるのに十分かもしれない。

キャッシュレス化が乱立しているが、QRコードを使うのは訪日外国人全体の4人に1人の中国人のみ。残りの3人はカードで事足りるので、むしろカード決済の普及が先決ではないだろうか
とはいえ、近隣アジアの国々に比べ、これほど極端に日本人が出国しないというのは、さすがに心配である。ここで1人あたりのGDP(2017年)を比較しても始まらないかもしれないが、韓国(29位)や台湾(36位)は、日本(25位)より低いことを考えると、日本人の出国マインドの萎縮は、単に懐具合の問題だけではなさそうだ。
昨今では訪日外国人の増加ばかりが取り上げられがちだが、彼らが増えた理由は、結局のところ、経済成長で所得の向上した近隣アジアの人たちからみて、長期デフレの日本の物価が相対的にみて高いと感じなくなったからなのだ。これは日本人にとって素直に喜べない話だが、実際にアジアの国々を訪ねたことがある人なら実感しているだろう。出国率の低さは、この種の近隣アジアに対する理解も含め、日本人の情報格差を拡大しているおそれがある。
そもそも海外旅行に行く、行かないというような話は、人に無理強いするものではない。それでも、メディアやネットを通じて伝えられる海外の情報がどれほど公平で客観的なものなのか、自分なりの判断指標を持つために、自分で海外に足を運ぶことが、これほど必要とされる時代はないのではないだろうか。これは若い世代に対してより、むしろ、この国の大人たちに言いたい気がしている。
連載 : ボーダーツーリストが見た 北東アジアのリアル


ついに出生率1.0割れ、韓国に迫る国家存亡の危機
古森 義久
2019/04/10 06:00 JB PRESS

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
「韓国の文在寅政権は、北朝鮮との融和に国家資源を注ぐよりも、自国内の人口減少や社会の危機に対処しないと破局的な結果を招くことになる」
 3月下旬、米国ワシントンの大手研究機関が、韓国の文在寅政権に対するこんな警告を発表した。
 韓国は世界の中で最低水準の出生率を記録し、高齢層の貧困化や自殺者の急増など、社会の破綻の兆しが表れてきている。ところが文政権はそうした危機への対処に取り組もうとせず、北朝鮮との融和や経済協力ばかりに国家の優先目標を置いている、という警告だった。

国家の危機が目前に?

 ワシントンの国際戦略問題研究所(CSIA)の朝鮮半島研究部は、米韓関係をさらに重視するという観点から、この3月末に「朝鮮問題公共広場」と題するネット上の論壇サイトを開設した。主に韓国の社会や国内経済の課題を論じ、米国の朝鮮半島政策の指針とすることがサイト開設の目的だという。
 その第1回のテーマとして取り上げたのが「韓国の人口問題」である。2月27日、2018年の韓国の出生率が0.98にまで落ち込んだことが発表された。その発表を契機として、韓国の人口問題を取り上げることになった。
 論壇には、韓国の人口問題や社会問題に詳しいベテラン・ジャーナリストのエバン・ラムスタッド氏と、ジョージタウン大学のエリザベス・スティーブン准教授が米側の専門家として登場した。現在はミネアポリス・スター・トリビューン紙の経済部長を務めるラムスタッド氏は韓国駐在の経験が長い。韓国の社会問題に関する豊富な知識を買われて、CSISの上級研究員も務める。またスティーブン氏は人口動態に関する研究を専門としており、韓国の人口問題に関する著書もある。
 論壇では2人が対話する形で、韓国が抱える人口問題の現状と深刻さを明らかにしていった。
 2人の見解によると「0.98」という数字は、韓国で過去最低の記録である。また世界の中でも最低の水準であり、このまま進めば2027年には韓国の総人口が減少に転じ始め、国家としての危機が迫るという。
 だが文在寅大統領は、人口問題に対処しようとしていない。2月27日にこの緊急事態が明白となっても、ベトナムハノイで開かれた米朝首脳会談への関与に忙殺され、自国への危機に十分な関心を向けていない、という指摘だった。

経済問題で大きなミスを冒した文政権

 ラムスタッド、スティーブン両氏の論壇サイトでの発言の要旨は以下のとおりである。
・一般的に出生率は、その国の経済が急成長する際に下がる。韓国でも同様だと言える。しかし韓国では、若い世代の高等教育志向、都会志向などによる結婚延期、出産忌避、少子化といった傾向が他国よりも顕著である。その一方、若い世代の将来への展望が明るくない。
・韓国は出生率の低下により、2021年には65歳以上の人口が15歳以下の人口を200万も上回る見通しである。経済の停滞も顕著であり、高齢層の貧困率が46%、自殺が75歳以上では1万人中16人といった数字は、いずれも先進国では最高となっている。
・文政権は出生率低下を防ぐ対策をとってはいるが、2019年にはその予算を50億ドルも減らした。対策の中身は、育児の経費補助、保育園の増加など目先の問題ばかりを優先しており、企業で働く女性社員の出産や育児への支援、男性社員の育児休暇、さらには女性の雇用全体の改善など構造的な課題についてはほとんど取り上げない。
文在寅大統領は、米朝間の仲介役としては賢明な行動をとるかもしれないが、自国の人口問題解決の土台となる経済問題では、最低賃金の大幅値上げ、原子力産業の急激な規制など、明らかなミスを冒した。文大統領は、国民が明るい将来を感じられるように、経済、教育、社会に関わる諸問題の構造的な改善を図るべきだ。
・任期の半ばを迎えた文大統領は「北朝鮮問題への取り組み優先」という基本スタンスを改め、少子化、高齢化、そして、その背後にある基本的な社会の課題解決に、より多くの国家資源を投入すべきだ。現状では、米朝間の仲介にさらに努めたところで、北朝鮮の非核化を近い将来に達成できる見通しは少ない。
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 CSISを通して発せられたラムスタッド、スティーブン両氏の以上のような批判や助言は、韓国の同盟国である米国からの率直なメッセージだという。「北朝鮮問題よりも自国の問題を」という常識的な助言だともいえるだろう。
 それは言い換えると、米国側から自明の理ともいえる、そんな助言を受けねばならないほど、文政権が非常識な路線を歩んでいる、ということかもしれない。